高校物理は力学、電磁気学、波動、熱力学、原子物理の5つの分野に大別されることは、物理で大学入試を受ける方なら必ず知っているでしょう。
その中でも、大学入試の「物理」という科目はほとんどの場合大問3題から成り立っており、力学から1題、電磁気から1題、波動または熱力学または原子から1題、という構成が一般的です。
ここからわかるように、力学と電磁気学は必出ですが、熱力学は必ず出るとは限らないわけです。そのため対策が後回しにされてしまい、できる受験生とできない受験生の差が大きく開く分野になってしまっています。
本来、熱力学は出題のパターンも覚えるべき公式も少なく、きちんと学習をすれば全然難しくありませんし、満点を取ることも全然可能です。今回紹介する内容をぜひとも実践し、いつ熱力学の問題が出題されても得点を計算できる得点源にしておきましょう。
1.熱力学ができない原因まず最初に、あなたが熱力学を得意だと思っていない原因を見ていきましょう。
1-1. 今まで学習してきた力学や電磁気学と決定的に違う点がある力学や電磁気学は、1つや2つの物体についての考察をしてきました。
例えば机の上で球を転がし、壁にぶつけて跳ね返らせるような運動を見たり、電場や磁場がかかっている空間で電荷を持つ小球を動かしてみたりしました。
しかし熱力学では、空気を構成する分子(熱力学では主に粒子と呼びます)にかかる力や粒子の運動についてはほとんど考えることはなく、空気という系全体でどのような振る舞いを考えます。
サイコロを1つだけ転がしたら何が出るかはわからないが、サイコロ1万個を同時に転がしたら1〜6の目まで大体均等に出るはずです。
それと同じく、粒子ひとつひとつの運動はわからないが、系全体ではこんな動きをするだろうという、いわば確率論的な考え方をするのが熱力学という分野です。
まず一般的に、この考え方を理解できていない受験生が多いので、「ひとつひとつの粒子の動きは気にしなくていい」という考え方を持ちましょう。
1-2. 自分で決めた設定がきちんと理解できていない2つ目に熱力学ができない原因としてあげられるのは、自分で決めた設定がきちんと理解できていないことが挙げられます。
さらに具体的にいうと、熱力学第一法則です。
気体がした仕事をWとするのか、外力が気体に対してした仕事をWとするのかで式が異なってしまいます。
気体がした仕事をWとした場合、
W=ΔU-Qとなりますが、
外力がした仕事をWとした場合、
W=ΔU+Qとなります。(ちなみにΔUは内部エネルギーの増加量、Qは与えた熱量を示しています。)
さらにこれが厄介なことに、教える先生によって熱力学第一法則の公式や定義が異なっているため、学校の先生の公式と塾の講師の教える公式、さらに参考書のまとめページに載ってる公式がバラバラな可能性があります。
そのため、公式の字面ではなく、本質的な熱力学第一法則の意味を理解しないとこの壁を突破できないのです。
そもそも熱力学第一法則は、「与えられた熱量Qは、内部エネルギー変化ΔUと気体がする仕事Wだけで100%消費します」と言っているのです。
熱量Qが与えられると、温度が上がるので内部エネルギーは増加します。
また温度が上がるということは、内部の空気を構成する粒子の運動が激しくなるので、外部に対して仕事をしますよね。
よって、
Q=ΔU+Wという式が出てきます。(このWは、気体がする仕事を正としています)
私がおすすめしているのは、「与えた熱量Qは、内部エネルギー増加量ΔUと気体がする仕事Wになる」と日本語の解釈も合わせて覚える方法です。
1-3. 読解力が問われる熱力学の問題の特徴としては、問題文が長いことが一つ挙げられます。
また問題の中で、「⑴と⑵で設定が違う」なんてこともよくあります。
問題の設定がコロコロ変わるということです。
例えば、⑴では定温変化をさせていたのに、⑵では定積変化をさせている、などということですね。
集中力を持って取り組まないと、問題文に置いていかれてしまう可能性もありますし、問題文が長い分時間がかかりすぎて時間切れになってしまったり、他の問題に割く時間がなくなってしまう可能性もあります。
これを防ぐためには、どのような条件で、どのような変化をさせたのかを瞬時に読み取る力が必要で、それを読解力と呼んだのです。
国語の論説文や小説文を読んで読解力をつける必要はないので、ある程度長い問題文でも対応できるように、普段からそれらの問題文を読んでみる癖をつけてください。
2.熱力学のおすすめ勉強法ここから本格的に熱力学のおすすめ勉強法を紹介していくことにします。
基本的な流れは「教科書や参考書で必要な公式や知識をインプット」→「問題演習でアウトプット」で構いません。
先ほど紹介した、熱力学が苦手な原因を踏まえた上で、おすすめ勉強法を詳しくみていくことにします。
2-1. 公式や必要な知識をインプットするまず最初に行うべきなのが、公式をインプットすることです。
「公式を覚えるのが苦手」という受験生も多いと思いますが、力学や電磁気学に比べて、熱力学で必要な公式の数は圧倒的に少ないです。
わずか20個程度なので、頑張って覚えてしまいましょう。
「頑張って覚えてしまいましょう」といいましたが、当然ながらただ丸暗記をすればいいわけではありません。
公式を覚えるときの注意点①文字の意味と単位も合わせて覚える②公式を導出してみる③公式の意味を考え、日本語に解釈する④公式を実際に使う
物理の公式を覚えるときは、上記の4点は必ず意識しておきましょう。
また、公式の暗記に時間をかけているのはもったいないです。
公式は2〜3日間でパパッと覚えてしまい、問題演習をして「使える」ようにすることが大切です。
必要以上に時間をかけすぎないようにしましょう。
2-2. 問題演習をする一通り公式のインプットを終えたら、続いて取り組むべきなのが問題演習です。
楽譜の読み方を学んでもピアノが弾けるようにならないのと同じで、公式も自由に使いこなせるようになるための練習が必要になります。
また時々、「間違えるのが怖くて問題演習ができない」という方もいるようですが、練習で間違えることを恐れてはいけません。
人は誰しも、”できない”という段階を経由して”できる”という段階に到達しますし、「間違えるのが本番じゃなくてよかった」というふうに考えるべきです。
そもそも成績を上げるという行為は、できない問題や苦手な分野を見つけ、できるようにしていくことです。
練習の段階ではどんどん間違えてできるようにしていくべきですし、解けない問題に出会ったら、「弱点を教えてくれてありがとう」と思った方がいいでしょう。
最初はできなくて当たり前なので、学校で配布される「セミナー物理基礎+物理」や「リードα物理基礎+物理」などの教科書汎用問題集などから問題演習をはじめていき、公式を自由に使いこなせるようにしていきましょう。
3.まとめ今回は、熱力学でよくつまづくポイントや、熱力学の勉強法を紹介してきました。
今回紹介した気をつけるべき点や意識した方がいいポイントを踏まえて学習を進めていけば成績アップも早いので、ぜひ今回学んだことを今日から学習に生かしてください。
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